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医療通訳士の資格について詳しく解説

異なる言語や文化を持つ外国人患者と医療従事者との間に入り意思疎通をサポートする医療通訳者ですが、医療通訳士になるには專門の資格があるのでしょうか?ここでは、医療通訳者を目指す人が知っておきたい医療通訳に関する資格の種類や育成環境、法制度などについて解説します。

医療通訳者の資格はあるの?

現状、医療通訳士には国家資格や公的資格の制度はなく、複数の民間企業や団体が医療通訳に関する技術を評価認定する目的で独自の試験を行っています。試験を主催する民間企業や団体の中には、試験の結果に対して独自の資格を発行している場合もあります。

主な医療通訳の民間認定試験

現在実施されている医療通訳に関する民間の認定試験には、以下のようなものがあります。
医療通訳技能認定試験(日本医療教育財団)
https://www.jme.or.jp/exam/sb/outline.html

医療通訳育成カリキュラム基準に沿った資格の取得が望ましい

医療通訳者として活躍するために必ず資格が必要というわけではありません。しかし、資格の取得は、医療通訳者に必要な一定の知識や技術を証明するには有効な手段のひとつです。

医療通訳者には通訳技術のほか、医療用語や日本の医療制度、異文化理解、異文化コミュニケーションについてなど、幅広い知識が求められます。そのため、專門のスクールや勉強会で学び、技術を身につけ、実務経験を重ねていくことが必要です。まずは一般の通訳としての通訳経験と社会人経験を積んだ上で医療分野について專門知識を学ぶ方法が効率的といえます。
あるいは専門知識と実務経験がある医療従事者の場合は、それを外国語で表現できるよう語学のスキルを磨く必要があります。専門用語だけでなく一般的な会話が必要な場面もありますので、最も必要な分野から外国語を学び始めるのも良いでしょう。

現在は医療通訳において国家資格は設けられていないものの、厚生労働省は、医療通訳人材を育成するための「医療通訳育成カリキュラム基準」を定めています。この基準は、医療機関の外国人受け入れの仕組みを支援するために、医療通訳育成における研修形式や内容、時間などの基準を提示したものです。認定試験・検定試験を受ける場合には、この基準に準拠したものを選択することが望まれます。

医療通訳の制度化や法整備について

医療通訳は、訪日・在留外国人の増加に向けて認証制度の実用化が進められており、近く制度化される予定です。

日本では、1990年以降入管法改正によって外国人労働者の定住が始まりました。医療通訳は、外国人住民が公的サービスを利用できるようにする目的で、自治体などの公的機関や、非営利団体によって始められたものです。また、外国人が多く集まる地域を中心に、独自に通訳者を配置し、外国人対応を行う医療機関も登場しました。

その後、医療機関やNPOにより医療通訳者の研修や雇用などへの取り組みが広がりを見せ、2010年には医療通訳の基準を検討する協議会による「医療通訳共通基準」、2011年には医療通訳士協議会による「医療通訳士倫理規定」が作成されるなど、役割や能力の基準の統一を目指す動きが見られました。そして、2014年7月の閣議決定では、「健康・医療戦略」として、医療通訳配置を含めた外国人患者受入体制の充実が盛り込まれます。

現在、厚生労働省は「医療通訳育成カリキュラム基準」を提示し、「医療機関における外国人患者受入環境整備事業」が進められています。医療通訳における認定制度の必要性の高さはかねてより指摘されていましたが、認証制度発足に向けて具体的な施策研究が続いています。

なお、2019年1月に開催された「訪日外国人旅行者等に対する医療の提供に関する検討会」では、認証試験ガイドラインや研修ガイドラインの公表、認定医療通訳者制度実施について言及され、早ければ2019年度末の認証試験制度発足を目指していることが明らかになりました。認定制度の実用化までは間近ではないでしょうか。

まとめ

2019年4月より、入管法改正による新たな在留資格が認められるようになったことにより、訪日観光客以外にも、外国人労働者の増加も見込まれます。それに伴い、日本語を母国語としない人々が適正な医療サービスを受けるために必要な医療通訳の需要はさらに高まっていくことでしょう。医療通訳認定制度の実用化へも秒読み段階で、将来性が期待できます。

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