INFORMATION医療通訳情報

医療機関での通訳って、一般の通訳と何が違う?

現在通訳として活躍している方の中には、医療機関で通訳を行う医療通訳に興味を持っている方もいるでしょう。一般の通訳経験は医療機関でも活かせるのでしょうか。また、医療通訳として活躍するためには、どのような勉強をしたらよいのでしょうか。今回は、医療通訳と一般の通訳の違いという観点から、医療通訳について詳しくご紹介します。

一般の通訳と医療通訳の違い

医療通訳では、一般の通訳とは異なり、ただ言葉の意味を伝えればよいものではありません。医学的な内容を個々の患者に伝えるため、国によって異なる医療制度や、文化や価値観の違いを踏まえた上で、医療従事者とのコミュニケーションをサポートすることが求められます。そのため、多数ある通訳の中でも難易度は高い方に位置付けられ、言語によっては医療通訳者が不足している状況です。

医療用語や医療制度の知識が必要

医療通訳の目的は、医療従事者と外国人患者が正しく意思疎通ができるようにすることです。患者の訴え、医療従事者の説明を正確に、過不足なく伝えなければなりません。そのため、病名、検査用語、薬品名といった医療の專門用語や基本的な医学的知識、そして医療制度に関する知識が必要となります。

文化や価値観の違いに配慮したコミュニケーションが求められる

日本と諸外国では、文化や価値観も大きく異なります。医療従事者に通訳する際には、背景となる文化や価値観、あるいは宗教的背景や環境の違いについても理解したうえでの対応が必要です。
また、国によって一般的な治療法が異なるという例も少なくありませんし、告知についても考え方が異なります。そのような特有の違いについても理解し、適切な対応を取らなければなりません。

医療通訳の特徴

医療通訳は、単なる会話ではなく、医療従事者と外国人患者が正しく意思疎通を図ることが目的ですので、次のような特徴があります。

原則として逐次通訳

医療通訳は、原則として、一文から数文の発言を聞き終えてから訳す逐次通訳です。足さず・変えず・引かずの通訳を行います。一般の通訳のように通訳者の意図や感情が入ってしまうと、正しく伝えることができないからです。また、正確さを期すため、単語のかたまりを聞きながら訳していく同時通訳は行いません。

立場を理解し、正しい通訳を行う必要がある

医療通訳では、普段の生活では使用しないような專門用語や特殊な単語も使用します。そのため、わからないときには意訳ではなく、聞き返しやメモを活用して、正しく伝えます。また、医療通訳という立場を理解しておくことも重要です。自らの個人的な知識による補完は行わず、説明が不足する場合は、医師に追加の説明を求めます。

医療現場で求められるポイント

医療通訳は、医療従事者と外国人患者のコミュニケーションを介在するための存在です。次のようなポイントを押さえたうえで通訳に携わることが求められます。

明確に伝わる表現・単語の使用

医療通訳では、患者の症状を医療従事者に正確に伝え、さらに医師の診断や治療方針などを患者に正確に伝えなければなりません。医学用語が多数出てくる場合には、用語をそのまま訳すのではなく、患者に伝わるように平易な表現や単語に言い換えてもらえるよう医師に依頼するといった技術も必要になります。絶対に勝手に解釈し言い換えたり、曖昧な表現は行ってはいけません。

不安感を与えない対応

外国人患者にとって、健康に問題を抱えている状態で、医療従事者と母国語でのコミュニケーションができない状況は、相当な不安を感じることは想像に難しくありません。そのため、言葉が通じることをきちんと理解し、安心してもらえる対応が求められます。

まとめ

医療通訳は一般の通訳よりも高度な知識・技術が必要とされますが、それだけにやりがいが大きな仕事です。医療従事者と外国人患者が通じ合う瞬間を見たときや、適切な医療を受けられて回復した外国人患者から感謝を伝えられたときなどは、大きな喜びが感じられるでしょう。
今後、訪日・在留外国人の増加にともない、医療通訳の需要はさらに高まることが予想されます。英語のみならず、韓国語、中国語、ポルトガル語、ベトナム語、ドイツ語、スペイン語、フランス語など様々な言語で医療通訳士が求められています。医療通訳でさらなる活躍を目指してみてはいかがでしょうか。

記事一覧へ戻る