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メディカルツーリズムとは

近年、「メディカルツーリズム」という言葉を耳にする機会が増えました。メディカルツーリズムとは外国人が、自国以外で医療サービスを受けるために旅行を兼ねて海外に渡航することです。メディカルツーリズムによって医療業界がどのような影響を受けるのか、またメリットや課題について解説します。医療通訳との関係についても知っておきましょう。

メディカルツーリズムについて

メディカルツーリズム(ヘルスツーリズム)とは、旅行と医療サービスの両方を目的に自国以外の国を訪れ、旅行先の国で、自身が希望する治療や検診、手術などを受けることをいいます。
日本は、メディカルツーリズムにおいて諸外国よりも遅れを取っていました。しかし、インバウンド推進の一環として2011年には医療ビザが発給されるようになり、受け入れが拡大しています。日本の医療水準は非常に高い一方、費用は諸外国よりも高額でないことから、訪日して治療を受けたいというニーズは高いです。現在では、高度な治療だけでなく、検診や健康増進目的のヘルスツーリズムも多く見られます。

メディカルツーリズムのメリットと課題

日本でも年々増加しており、国の施策としても進められているメディカルツーリズムですが、大きなメリットがある一方、懸念も示されています。

メディカルツーリズムのメリット

メディカルツーリズムは、医療業界の活性化をもたらします。医療資源の活用が上がる結果、より医療設備への投資や医療技術の向上が期待でき、よりよい医療が受けられるというものです。また、メディカルツーリズムでは滞在が長期になり家族の同伴も可能なため、旅行費用は一般の旅行よりも高額になります。したがって、医療機関周辺での観光や宿泊滞在による、高い地域経済活性効果も期待できます。
一方、外国人患者側では、自国よりも高水準な医療を安い費用で受けられるという点がメリットです。

メディカルツーリズムの課題

メディカルツーリズムは、医療業界の活性化やインバウンド効果が期待できる一方、従来の日本の医療保険制度の崩壊に繋がるという問題も指摘されています。メディカルツーリズムでは保険外診療となるため、医療機関には大きな利益をもたらします。しかし、利益を優先させるために保険診療を希望する日本人の診療がおざなりになるのではと懸念されているのです。
本来、医療は公益性が高く、倫理観が求められるものです。メディカルツーリズムは「医療を購入する」という側面もあるため、慎重に進めていくべきものだといえます。将来的には、メディカルツーリズムを想定した何らかの法整備が必要ではないかとも言われています。

メディカルツーリズムだけの医療通訳ではない

メディカルツーリズムは、そもそも医療サービスを受けることを目的としており、治療や検査内容が事前に明確であるという特徴があります。そのため、あらかじめ受け入れ可能な医療機関がある程度決まっており、医療通訳の手配を含めて環境が整っている状態です。

一方では、メディカルツーリズムに医療通訳者が求められるのと同時に、今この瞬間も訪日旅行者や在留外国人が医療を受けるため、医療通訳者の支援を求めて待たされている現状もあります。
訪日旅行者は増加を続けていますし、入管法改正により新たな外国人在留資格が設けられたことから、今後日本の在留外国人は一層増加すると考えられています。
また引き続き一般の観光を目的とした旅行者も増加していくと考えられます。
しかし、このような外国人は、メディカルツーリズム利用者とは異なり、スムーズに医療機関で医療通訳を利用できるとは限りません。外国人患者が必要に応じて母国語で安心して診療が受けられるためには、医療通訳制度の充実が欠かせないのです。

まとめ

メディカルツーリズムは今後益々盛んになっていくことが予測される一方、問題点や課題も指摘されています。メディカルツーリズムにより医療通訳のニーズが高まることは間違いありませんが、医療の公平性が損なわれることがあってはなりません。
在留外国人・訪日旅行客が安心して日本で生活できるように、医療通訳を「今、まさに」必要としている外国人患者が利用できるよう、医療通訳制度の整備や医療通訳者の育成・確保が急務と言えます。

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