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外国人患者の受け入れに対する課題と問題点

医療機関が外国人患者を受け入れる際に、言葉や文化の壁から対応に難しさを感じている例は多いです。厚生労働省の実態調査によると、外国人受入れ実績のある医療機関のうち、2割弱が未収金問題を経験していたという結果もあり、何らかの対策を考えているという医療機関もあるでしょう。今後、外国人患者の対応の課題や問題点に対してはどのように向き合っていけばよいのでしょうか。

外国人観光客の医療整備が急務

在留外国人および外国人観光客の増加にともない、医療機関の外国人受入れ体制の整備は急務となってきています。特に、今後はラグビーワールドカップや東京五輪、2021年のワールドマスターズゲーム、2025年の大阪万博など国際的ビッグイベントが控えています。ますます外国人観光客が増加する見込みで、短期滞在者への医療対応ニーズはさらに高まることでしょう。また、医療サービスを受けるために訪日する医療ツーリズムも盛んとなってきています。

医療現場では、現在も外国人患者が日に日に増えていますが、これから迎えるビッグイベント時に向けては、外国人患者の受け入れ体制が間に合わないのではないかと危惧されているのが現状です。外国人観光客の増加にともない、拠点病院レベルではない一般のクリニックなどにも外国人患者が訪れる可能性が高くなります。
既に観光地の中でもアウトドアやスポーツなどのアクティビティな体験ができるエリアでは、病気だけでなく怪我によりクリニックや病院を訪れる外国人患者が増加しています。

経験が求められる外国人患者の治療前と治療後の応対

外国人患者の対応は、ただ通訳を介してその場の診療だけ行えればよいというものではありません。外国と日本では医療制度が異なりますので、まずは制度の説明から必要になります。また、診療費の未払いを防止するため、受付け時には外国人観光客の場合には旅行保険、在留外国人の場合には、健康保険に加入しているかといった確認対応も求められます。

さらに、診療後の会計時には、診断書や明細書、領収書の発行、場合によってはカルテのコピーなども発行し、状況により求められる言語で説明をしなければなりません。更に治療後のケアや服薬に関して、外国語の資料が必要となる場合もあります。

このように、外国人患者受入れにはさまざまな事前準備や専門的なノウハウが必要です。

文化・習慣への対応も必要

外国人患者受入れにあたっては、文化や習慣の違いの問題もあります。特に宗教については、食事や礼拝、応対への配慮が必要となる場合も少なくありません。また、文化の違いから不要なトラブルを引き起こしたり、治療の継続が難しくなったりする場合もあるため、外国人の文化的背景への十分な理解が必要です。同じ診断の告知であっても日本と諸外国では捉え方が異なりますので、患者の国の習慣に合わせた対応が求められます。

需要が高く常に人手不足の医療通訳者

言葉の通訳だけでなく、文化や習慣なども含めて、医療従事者と外国人患者の架け橋となるのは医療通訳者です。しかし、公的な資格制度が未整備であることや、医療の専門知識が必要というハードルの高さのため、人材は限られています。英語や中国語以外の希少言語の場合はその傾向はより顕著です。

さらに、医療通訳者を求めているのは、医療機関だけではありません。製薬会社や医療機器メーカーといった医療関係分野でも需要があります。また、医療ツーリズムの需要に対しては、日本の医療機関との調整役でもあるメディカルツーリズムコーディネーターや、美容医療などの分野でも医療通訳者が求められており、人材不足の状態です。

そのため、医療通訳者が必要であれば、人材派遣やアウトソーシング、遠隔医療通訳サービスを利用するといった手段を利用するのもひとつの方法でしょう。

まとめ

外国人患者の受け入れには、外国人が医療を受けられるように例文などを収録した診療ツールが利用される場合もありますが、言語以外にも文化や習慣、そして医療制度の違いによる壁も生じる点が課題です。診療時だけでなく、受付や会計といった場面においても、医療通訳を積極的に導入することによって、外国人患者受入れに対する課題の多くの解決につながります。

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